2010年にウイスキーの本場・スコットランドで開催された世界的なウイスキー大会
そこで誰も聞いたことがなかったような台湾のウイスキーが、伝統と格式あるスコッチウイスキーの名門蒸留所を次々に打ち破ったどころか、圧倒的点数差を付けて圧勝してしまった・・・
これこそ、今や世界中が注目する台湾の新興ウイスキーブランド
カバラン!
2008年にウイスキーを初出荷してから、たった2年で世界の頂点に立ってしまった
という、世界中どこの蒸留所もやってないような偉業を成し遂げてしまったとんでもないウイスキーメーカー
ということで今回は、そんなカバランの特徴、歴史、ラインナップごとの違いを初心者の人にも一から分かるように解説してみようと思います!
世界一の台湾ウイスキー「カバラン」蒸留所の歴史や評価を徹底解説!
カバランとは?
カバランの蒸留所に、最初のウイスキーの1滴が滴り落ちたのは、2006年3月
後にカバランの名前を世界中に広げることになる、スコットランドのウイスキー大会の約4年前の日です
元々、政治の問題で輸出が難しかったり、そもそも気候が暑すぎてウイスキー製造に向いていない
こんな感じで、何かとウイスキー造りには逆風が多かった台湾
しかし、2002年の台湾の世界貿易機関(WTO)加盟を機に、台湾の大手飲料メーカーである「金車グループ」が始めた、台湾産ウイスキープロジェクト
ちなみに金車グループは元々、コーヒーや乳飲料を得意とするメーカーで、ウイスキー造りは、完全にゼロからのスタート
そこでまず行ったのが、世界五大ウイスキーの中で、スコットランドと日本をお手本にすること
ウイスキー界の生ける伝説であり、数多くの蒸留所のアドバイザーを務めたジム・スワン博士の指導を受け、また日本・サントリーの山崎蒸留所を見学するなど、スコットランドと日本のウイスキー造りをとにかくたたき込んだ
そして2006年に、台北から1時間ぐらいの場所にある宜蘭県に完成した台湾初のウイスキー蒸留所
ちなみに宜蘭県は、金車グループの本拠地であり、台湾有数の3800メートル級の山脈のふもとに位置する水の名所でもあります
ウイスキーを造る前から、この山脈から流れる湧水を使った金車のミネラルウォーターは美味しい!と台湾では評判だったほど
その後、蒸留所完成から2年後の2008年には、台湾初のウイスキー「カバラン クラシック」を初出荷
そして2010年1月のスコットランドで行われたウイスキー大会に、見慣れないゲスト的ポジションで参加したのが、カバランの伝説のはじまり・・・
2010年1月「バーンズ・ナイト」で世界一になった
2010年1月にスコットランドで行われた「バーンズ・ナイト」
ちなみに、ウイスキー評論家のチャールズ・マクリーン氏は、予想外の結果に「ああ、なんということだ・・・」と絶句したシーンが残されているほどです
このイベントは、世界的なウイスキーブームにより本場・スコッチウイスキーの注目が集まる中、
「スコットランド以外のイギリスのウイスキーも負けていない!」
とアピールする目的で、イングランドの新聞社が主催しました
ということで、イベントの趣旨は、スコッチウイスキーとそれ以外のイングランドウイスキーを目隠しして飲み比べること
そんな中、新進気鋭のアジアのウイスキーブランドということで参加したのがカバラン!
もちろん、当時はよほどのウイスキーマニアぐらいしか知らない、見慣れないゲスト的ポジションです
そして主催新聞社も当初は、
最近世界的にスコッチウイスキーの評価が高いけど、イングランドのウイスキーだって負けていない!
といった感じの予定調和にするはずだったのが・・・
蓋を開けてみたら、1位に立っていたのは、「KAVALAN」という聞いたことないメーカー。しかも、2位に圧倒的な点数差を付けている・・・
このニュースが一夜にして世界中に広まり、カバランの躍進が始まることとなります
カバランの現在
2010年代には、年間250万リットル程度だった生産量は、現在約900万リットルまで増強
また、ラインナップも約20種類まで増えました
しかもカバランのすごいところが、そのラインナップのほとんどの商品が世界的品評会で数々の賞を受賞していること
たった10年で、国際的ウイスキーコンペで約250にも及ぶ金賞を受賞しました
カバラン蒸留所について
台北から約50kmぐらい、車で1時間の場所にあるカバラン蒸留所
カバランを作り出した台湾大手飲料メーカー「金車グループ」の本拠地である宜蘭県にあります
台湾五大山脈のひとつである雪山山脈のふもとに位置し、ウイスキー造りを始める前から、この地で採水している金車グループのミネラルウォーターは美味しいと評判でした
「竹風蘭雨」という言葉が台湾に伝わるほど、宜蘭のお隣の県である新竹は風が強く、また蒸留所がある宜蘭は雨が多いことで有名です
そしてこの雨が、3800メートル級の雪山山脈に染み渡り、冷涼で透明な水となりカバラン蒸留所の平野から湧き出ます
ちなみにカバラン蒸留所は、一年中工場見学受け付けているので、台湾旅行に行くウイスキー好きは行ってみるのおすすめ!
ただ、世界屈指に新しい蒸留所なので、蒸留所の見た目はほぼそこらの食品工場と同じ・・・。あまりにも近代工場チックすぎて、拍子抜けしちゃうかも・・・
カバランの製造方法
- 水
- 酵母
- 熟成年数
スコッチとジャパニーズをお手本にしているので、製造工程はスコッチウイスキーによく似ています
しかし、上に書いた3つの工程にちょっと工夫を加えているのが、カバランの独特の南国風味ウイスキーを造り上げているポイント!
順番に見ていこうと思います!
まずウイスキー造りに一番重要とも言える水!
秋に大雨が降ることが多い宜蘭県。カバラン蒸留所の裏手にある、3800メートル級の山が連なる雪山山脈に磨かれた水は、程よい軟水となって、蒸留所のある宜蘭平野へ流れ込みます
ヨーロッパやアメリカで造られることが多く、硬水が一般的なウイスキー造りですが、アジア特有の軟水は、カバランのウイスキーの甘さを育んでいます
また、水が豊富に湧き出るカバラン蒸留所では、この湧き水をウイスキー製造の際の冷却水としても使用しています!
水の枯渇問題などから、冷却水は別の水源の水を使う蒸留所も多い中、なんとも贅沢です!
そして冗談みたいな話だけど、
カバランの一番の特徴といったら、パイナップルやマンゴーのようなトロピカルフルーツの味わいがすること!
当たり前だけど、パイナップルやマンゴーをウイスキーに混ぜたりはしていません!
で、この特徴的なトロピカルフルーツの味わいを生み出していると言われているのが、カバラン特製の酵母
元々、乳飲料の製造を得意としていた金車グループ。酵母の扱いはお手の物で、カバランの製造には、台湾の野生酵母を培養した、100%台湾製の酵母を使用している
真相はカバラン蒸留所しか分からないけど、最新のコンピューター制御で、分単位の発酵時間や、アルコール度数8.5%きっちりの極めて精密な発酵を行うカバラン
きっと、台湾原産の酵母がカバラン特有の味わいに大きく貢献しているはず!
そして最後に重要なのが樽による熟成
一般的に寒い地域で造られるのがウイスキー。台湾は、あまりにも暑すぎて、熟成スピードが速いことから、「ウイスキー造りは不可能」と言われていました
しかし、それを逆手に取ったのがカバラン!
スコットランドの4倍ぐらいで進む熟成スピードを活かして、たった数年の熟成でスコットランドの何十年もの熟成に匹敵する味わいを造り出してしまいました
ちなみに、台湾の気温は、スコットランドと同じ製造方法で作られた樽を6年置いておくと、中身が空っぽになっているというほど、熟成には過酷な環境
カバランでは最新のコンピューターで、樽一つ一つをモニタリングし、熟成のピークに達した樽は速やかにボトリングを行っています
さすがIT大国・台湾です!
また、もしもいつか10年もののカバランが発売されるのを楽しみにしているウイスキー好きは、上に書いた理由から、「カバラン 10年」は永遠に発売されません
熟成年数はたった数年だけど、他の蒸留所の数十年に匹敵する熟成が行われています
カバランの種類
カバラン クラシック
台湾人マスターブレンダー張郁嵐(イアン・チャン)氏が厳選した原酒をブレンドしており、ブレンドに使われる樽は、バーボン樽。シェリー樽、プレーンオーク樽など
まるで蜂蜜をかけたようなマンゴーの味わい、そして洋梨やバニラのような西洋のウイスキーでは一般的な味わいがうまく調合されている
また、台湾原産の花「胡蝶蘭」のような香りがどこか漂い、西洋のウイスキーと南国の香りが上手くブレンドされた絶品!
1本1万円と高いけど、こんなウイスキー世界中どこ探しても見つからないので、飲む価値は絶対にある!
カバラン コンサートマスター
ラインナップでは後発だけど、あまりの個性から、もはやカバランの代名詞的存在となっているのがコンサートマスター
ポルトガル産のポートカスク樽を使用しており、ポートワイン特有のイチゴのような香りが楽しめる
クラシックで感じられた、南国の香りは抑えられ、ポートカスクっぽい、イチゴ、蜂蜜、バニラなどの甘い味わいが中心
イチゴの香りが印象深いが、他にも青りんご、洋ナシ、マンゴー、バナナなど様々なフルーツの香りがして、やっぱりこれはカバランだ!と再確認できるはず
キングカー コンダクター
カバランを造っている企業「金車グループ」の名前を冠した自信作
チーフブレンダーが厳選した、風味の異なる様々なオーク樽を使用しているようで、詳細は非公表。多分、ものすごく色々な種類を使っているはず・・・
カバラン特有のバナナ、マンゴー、パパイヤなどの南国フルーツの香りはそのままに、金車グループの本拠地である宜蘭県の雪山山脈をイメージしたきめ細い滑らかさがコンセプト
一見くどいように思える南国フルーツの香りと、山脈から滲み出る天然水のきめ細やかさを両立している、なんとも不思議なウイスキー
なんだかコンセプト的には、世界のどこか他の蒸留所にもありそうだけど、やっぱりこんなトロピカルな味わいを実現できるのはカバランだけ!
まとめ
ということで、登場からたった数年で世界のトップに上り詰め、ますます注目を集めるカバランの紹介でした!
筆者が台湾大好き人間ということもあって、個人的にはかなり好きなウイスキー銘柄であるカバラン!
確かに、ちょっと酸味とアルコールの辛みが強くて、マンゴーやパイナップルみたいな独特の香りがするけど・・・
カバランはやっばりそれがいい!
世界中探しても、こんな強烈な個性を持ったウイスキーってないと思います!
てことで、台湾好きな人はもちろんのこと、「ウイスキー造りは絶対に不可能だ! 」と言われていた南国で造られた、ちょっと変わったウイスキー飲んでみたい人にカバランはおすすめですよ!
他のウイスキーじゃ味わえない、トロピカルな味わいが楽しめます!