日本で一番売れている車の形は?と聞かれたら、おそらく多くの人は、ミニバンと答えるでしょう。そんなミニバン王国日本において、現在新車で買える国産ミニバンを全てまとめてみました。自動車の開発に携わっている筆者独自の視点も書いてあるので、クルマ選びに悩む世のお父さんは必見です!
新車で買えるおすすめ国産現行ミニバンまとめ一覧
トヨタ・シエンタ
177〜231万円・20.2km/L
2015年7月にデビュー、ライバルのホンダ・フリードと熾烈な販売競争を繰り広げており、フリードプラスの2列シートに対抗するべく2列シート仕様を追加するなど2018年9月にマイナーチェンジしたシエンタ。コンパクトな5ナンバーサイズでありながら、7人乗車可能という3列シートが人気の秘訣。長所は燃費性能で弱点は安全性能だったがマイナーチェンジで改善し、ホンダに引けを取らない性能になった。軽自動車並みの価格帯でありながら、5ナンバー普通車というお買い得感がユーザーに支持されており、「軽自動車には乗りたくないけど、なるべく安い車が欲しい!」という購入層が多い。また、ヴォクシーやノアを買ったものの日頃の買い物や子供の送り迎えで運転するお母さんには大きすぎて運転しづらい、シエンタぐらいならちょうどいい。ということで、あえてダウンサイジングして買い換える購入層も一定数いる。他のメーカーにはないビビッドでカラフルまたカエルみたいな可愛い顔が女性の心を掴んでおり、2019年8月にはプリウス、セレナ、ノート、アクアを追い越し再び国内販売数1位に返り咲いた。
ホンダ・フリード
188〜285万円・19.0km/L
2016年にトヨタ・シエンタを倒すべくデビュー。当初こそ順調だったが、対抗するシエンタのマイナーチェンジにより一気に販売数低下。そしてもう一度シエンタを倒すべく2019年10月に初のマイナーチェンジ、大きな変更としては後方誤発進抑制機能が追加された他、SUVチックな新モデルフリード・クロスターがラインナップに加わった。もともとシエンタとの違いとしてフリードが評価されていたのは「運転する楽しさ」この価格帯のミニバンにしてはキビキビと動く操作性がお父さんたちから定評を集めていた。ただ最近のホンダ車とトヨタ車全般の違いに言えるが、トヨタに比べてどこか遊び心が足りなく、今回のマイナーチェンジも変化と言えるほど、目ぼしいものは見当たらず、やはりしばらくはシエンタ一強が続きそうな状況。
日産・NV200バネット
193〜233万円・13.2km/L
一般ユーザーが購入を検討することはおそらくないであろうミニバン。いわゆる「はたらくくるま」の一種。一応日産最大の売れ筋であるセレナと同じチーフデザイナーがデザインを担当しているが、セレナがかっこいいと思わせるような凝ったデザインをしている一方、完全に「The 商用車」と割り切ったまるで同一人物のデザインとは思えない見た目。商用バンとしてはこれほど安い対抗車が他にいないため一人勝ち状態。荷物の配達はもちろん、老人ホームの送迎車、空港タクシーなどかなりあちこちで見かけることの多いはたらくくるま。
ホンダ・ジェイド
239〜274万円・18.0km/L
売れてない。大きな理由は中途半端な使い勝手。2+2+2の3列シートを装備しており、2列目が余裕を持って過ごせる居住性を持つのはグッド。しかし3列目がチャイルドシートレベル、しかも荷室の容量はたったの90リッター。ということで、購入を検討している人はほとんどがトヨタ・カローラフィルダーかスバルレヴォーグに流れたという状況。メーカーの資料にも、極めて販売不振、生産終了を検討と書かれている始末。CMソングに大人気米津玄師を起用するなど付け焼き刃の対策を取っているが、もうダメだと思う。
三菱・デリカ D:5
244〜421万円・13.6km/L
この車が三菱自動車製であることと電気シェーバーの刃みたいな独特のフロントマスクが気にならなければミニバンとしては良い選択肢。他のメーカーがやることと逆のことをやるのが三菱自動車。3列目シートは上に書いた同価格帯のホンダ・ジェイドとは対照的、デカくて分厚くて座り心地が良い。そして大人8人が快適に座れる居住性に加え林道もガンガン走れる走破性。三菱自動車の販促イベントで傾斜角45度というスキー場以上の勾配を登るデリカ D:5はもはやおなじみの光景。てなわけでなんだかんだいって販売好調のデリカ D:5。ミニバンの車内居住性とSUVの悪路走破生を併せ持つ、世界でも他には見ない孤高の存在。ちなみに電気シェーバーみたいな顔、発表当初は炎上レベルまで話題になり、三菱のデザイナーは夜も眠れない日々だったが、オラオラ系ミニバンが流行っている日本では「今までになかったすごい威圧感!良い!!」と思いの外一般受けしてしまい、受注好調。デビューから12年経った現在再び売れ始めた。
ホンダ・ステップワゴン
245〜435万円・17.0km/L
日本におけるミニバン戦争激戦区である300万円代5ナンバーミドルクラスミニバン。初代は常に1位、セレナなんか敵でもねー。という圧巻だったが、現在はノア・ヴォクシー・エスクァイア、セレナの後塵を拝する惨めな状況。かつてのミニバン屋であるホンダが作る後継なので、車としての性能も使い勝手も悪くない。なのに売れない!となると理由はやっぱり見た目。というのも、フリードの項目でも書いたが、最近トヨタも日産もかなり攻めた遊び心ある取り組みをしているのに対し、ホンダはどうもおとなしい。ということで、トヨタ3兄弟やセレナに比べるとステップワゴンの顔もなんだかおとなしく見える。おそらく状況打開にはフルモデルチェンジは必須かつコワモテのハイブリッド車を出すなど思い切った作戦を立てないとセレナには勝てない状況。
トヨタ・ヴォクシー
250〜324万円・16.0km/L
ミニバン王国トヨタ3兄弟の末っ子。現行モデルは2014年1月に登場し、さすがに古さが否めなくなってきた。2021年に新型が発売される予定。元々は2001年にノアと双子車として発売されており、結論見た目が違うだけと思ってもらって大丈夫。一方、下で書いているがエスクァイアだけはちょっと異質。世間的には若々しい見た目を持つヴォクシーの方が支持されており、販売台数はヴォクシーが優っている。
トヨタ・ノア
250〜324万円・16.0km/L
ヴォクシーの双子車で、中身はすっかり同じながら月販売台数で3000台近い差を開けられている。個人的にはほんの小さな見た目のデザインの結果がここまで車の販売に影響を及ぼすことが分かる面白い結果。ということですっかり同じ車なのに中古車相場もヴォクシーの方が約30万円高い。
日産・セレナ
252〜329万円・17.2km/L
「日本で一番売れているミニバン」なんか聞き覚えあるフレーズだなー?と思ったら、完全に日産の思う壺。セレナのCMで繰り返し流れている。ということで2018年のミニバン販売ランキングトップ、2019年もおそらくトップ。2019年8月にマイナーチェンジし、いま流行りのオラオラ系を極めたような顔になり、新たに全方位運転支援システムを全グレード標準装備などノリに乗っている。セレナ好調の理由として、日産独自の技術であるe-POWERがあり、高速道路でブレーキペダルをほとんど使用しない楽さは一度知ってしまうと、なかなか抜け出せなくなる。ちなみにブレーキペダルどころかアクセルペダルすら踏むのが面倒という人には、先進運転操作システムであるプロパイロットを使用したオートクルーズコントロール(ACC)である。手放し運転こそ出来ないものの、とりあえずアクセルを踏み続ける必要は無くなる。ACCが作動していれば、無駄な加減速もなく巡航、聞こえる音はタイヤのロードノイズと風切り音のみ、家族との会話も難なくできるという、まさにe-POWERの真骨頂が発揮される。ということでファミリーユースの需要を全てもぎ取ったようなセレナ。こりゃしばらくは日本一位の座は堅そう。
トヨタ・プリウスα
256〜355万円・26.2km/L
3代目プリウスの兄弟車として誕生したプリウスα。2011年当時、何もしなくても売れていくプリウス。こんな奇跡の車プリウスのミニバンが発売されたらいいなー。という販売店現場の声を元に誕生。所詮は5人乗りのプリウスを元に作られたプリウスαの7人乗りモデル、3代目プリウスに搭載されているニッケル水素電池ではどう頑張っても3列目のシートを積むことができず、新たにリチウムイオン電池を開発、これは現行の4代目にも引き継がれる先駆けとなった。しかしそんな新開発の電池のせいか価格も2列シートモデルより50万円高いという割高感があり、結局売れたのは2列シートモデル。これじゃプリウスα開発した意味ない!ということで、元となったプリウスは4代目へと代替わりしたが、相変わらず3代目ベースのまま現在も売られているプリウスα。4代目プリウスの見た目が世間から酷評されているという理由もあるが、どうやら次の登場はなさそうな車。
日産・NV350キャラバン
258〜410万円・9.1km/L
これもミニバンに入れるのか?と思う人もしれないが、国産ミニバンを全て紹介する記事なので、とりあえずミニバンっぽいものは全て紹介。2012年6月に登場した5代目にあたる現行モデル。NVの意味はNissan のVan。40年以上勝負を繰り広げるライバルはトヨタ・ハイエースだけど、どう頑張っても勝てない。で、日産車内はどんな雰囲気かと言うと「キャラバンよくやっているじゃないか!」というのも、2012年に7.3倍の差を付けられていた売り上げ台数は徐々に差を縮めてきており2018年には2.3倍まで追いついている。過去ハイエースに比べて比較も出来なかったほど人気がなかったのをじわじわと追い上げている途中。ということで、「やっっちゃえ日産!やっちゃえ日産!」てな感じでいけいけどんどんな雰囲気のNV350キャラバン。
トヨタ・エスクァイア
266〜326万円・16.0km/L
ミニバン王国トヨタ3兄弟の末っ子。ノアとヴォクシーが双子だとすると、エスクァイアは後から生まれてきた優秀な末っ子という感じ。ヴォクシー・ノアと共通のコンポーネントを使用しているが、他の2台にはない上質さを追求している。フロントグリルの見た目のそっくりさなど明らかにアルファードを意識しており、割と高額なアルファードの購入を諦める層の需要を一手に担っている。
トヨタ・ハイエースワゴン
281〜391万円・9.7km/L
一人勝ちしてる日本の商用車バン。海外でも大人気なので、とても盗まれやすい。日産・NV350キャラバンとかれこれ40年近く競争しており、時は遡ること20年前の話、商用車バンとしてはありがちな使い方である、片輪を歩道に乗り上げた状態で駐車すると車体がねじれてしまい、スライドドアが開かないという致命的な欠陥が発見されたキャラバンに対して、途上国の過積載にも耐えられるように必要以上の強度で設計され日本のそんな使い方ごとき余裕のよっちゃんだったハイエース。そんな感じで、「キャラバンはダメだ!だけどハイエースはすごい!!」という噂が広がり、現在の一人勝ちの状況が作られた。ただそこから日産の逆襲開始、徹底的にハイエースを研究した結果、しっかりした作りは当たり前のこと、購入後のカスタムに需要があると見出し、まさかの商用車にVモーショングリルを装備し、割とかっこいい見た目で出してきた現行モデル。おまけにこのデカくて運転しにくい車体を克服するために、日産独自の技術である上空から見下ろしているかのような映像を映し出すアラウンドビューモニターを装備。差を着実に詰められている状況である。
ホンダ・オデッセイ
298〜365万円・14.0km/L
低い車高、他のミニバンとは比べ物にならないレベルの操縦安定性が評価され大ヒットしたのは先代の話。箱型のバンだけがミニバンじゃないという前例を作り上げた立役者。しかし最近では箱型のミニバンもそこそこよく走るようになり、見た目もかっこよくなったことで、わざわざオデッセイを選ぶ理由がなくなってしまった。ということで、車としてのコンセプトは先代を引き継いでいる現行オデッセイだが、世間がオデッセイに飽きてしまったということで、あまり売れていない。全高が低い割に室内の高さは他のミニバンよりも高いという特徴を持っており、日産のフラッグシップミニバンであるエルグランドの室内高が1275mmであるのに対しオデッセイは1325mmとかなり高い。というのもホンダはこの現行オデッセイのために新型の薄型燃料タンクを開発。とにかく車高を下げることを目標に、下げれるだけ下げた努力の賜物だ。また、低重心・低車高の副産物として一級品のハンドリング性能を持ち、運転するお父さんはとても楽しい時間を過ごせるが、その一方乗り心地がすこぶる悪い。そんな尖った個性を持つ現行オデッセイ、エスティマ、アルファード、ヴェルファイアと価格帯がかぶることもあり、すっかり顧客が流れてしまっている状況。
トヨタ・エスティマ
327〜391万円・11.6km/L
2019年10月に29年の歴史に幕を閉じ、生産を終了するトヨタのミニバンジャンルを切り開いた功労車。最近は大型で高級なアルファード・ヴェルファイアと中型で安価なノア・ヴォクシーの中間的存在を担っていた。丸っこい独特のフォルムに、累計240万台を売り上げた人気ぶりから「天才たまご」と社内では呼ばれていた。この独特の丸っこいフォルムがきっかけで、大手教育会社のベネッセは広告車として「426GTしまじろうカー」なるものを製作した。
日産・エルグランド
331〜816万円・10.8km/L
2010年8月に登場の現行エルグランド。ホンダ・オデッセイと同じ低床・低重心を売りにしているが、高級ミニバンという割には車内が思いの外狭いことと、このクラスのミニバンを買う層は「迫力があって大きく見える車が欲しい」という市場のニーズの真逆を行っていることがアダとなり売れていない。ということで、日産も半ば諦めモード、「セレナが売れてるし、ま!いっか!」精神でずっと放置されている。結果、車格が下のセレナの方が最新先端技術など色々と良い装備が付いているというおかしな逆転現象が起きている。
トヨタ・アルファード
337〜737万円・12.4km/L
2015年に発売したヴェルファイアの双子。このクラスの車の中では、一番静かで、一番広くて、一番乗り心地が良い。と劣るものが何もない状況。ということで、高級ミニバン買うなら現状アルファードかヴェルファイアの一択。
トヨタ・ヴェルファイア
337〜737万円・12.4km/L
アルファードの双子、何が違うのかと言ったら、ノアとヴォクシーの関係と同じ、見た目が違うだけ、中身はすっかり同じ。そして販売数もヴォクシーと同じように、オラオラ感が強いヴェルファイアの方が売れている。最上位グレードは301馬力を発生する3500ccV6エンジンにスポット溶接増加と構造用接着剤使用による車体剛性強化というレクサスに用いられるクルマづくりを採用しており、クラウンすらも凌駕する走行性能を有している。一番売れているボディ色は「バーニングブラッククリスタルシャインガラスフレーク」なんでこんな名前を付けようと思ったのか、担当者には小一時間問い詰めたいが、売れているは正義。何をしても許される。ちなみに平均単価500万円近い商品が年間9万台も売れているというトヨタにとってはドル箱状態。こんな美味しいもの手放すわけがなく、トヨタとしてはなんとしても現状を維持するため、今後もトヨタ全力の開発が予想される車種。
【おまけ】
メルセデスベンツ・Vクラス
738万円
世界最高級ミニバン。ただたいていの国産車種がメルセデスベンツの車に太刀打ちすることなんてありえないのが世の中の常。セダンではレクサス・LSがSクラスに勝つなんて無いし、SUVではレクサス・LXがGLSクラスに勝つことも無い。が!ミニバンだけにおいてはヴェルファイアのあまりの出来の良さに、ベンツのVクラスが全く見向きもされない状況。さすがミニバン大国日本代表のヴェルファイア。ま。メルセデスベンツがこのVクラスを商用車生産ラインで生産しているなど、もともと力を入れていないジャンルに日本勢が全力で攻勢をかけているなどの事情もあるのだが・・・。しかし世界の雄メルセデスベンツがそんな状況に黙っている訳が無い。2019年に登場した現行モデルでついに本気を出してきた。とりあえず商用車生産ラインでの生産をやめ、他と同じ乗用車ラインでの生産。また最後発ということもあり、日本のミニバン勢を徹底的にベンチマーク、デザインもメルセデスらしさを出したオラオラ感、そして何より日本勢の穴であるディーゼルモデルをラインナップに加えてきた。もう完全に日本のミニバン勢倒す気満々。内装も評価の高い最新Aクラスのダッシュボード、EクラスやGクラスに使われている上質なレザー内装、10インチタッチパネル、温度調節可能なカップホルダーなど「メルセデスが本気を出したらこうなるのだぞ!」と言わんばかりの総力戦をかけてきた。とういことで今後のミニバン勢力図が大きく変わるかもしれないきっかけを作ったVクラス。ミニバン王国民として2019年以降もミニバン戦争からは目が離せない!
まとめ
全ての乗用車の中で、最も優れた積載能力を持つミニバン。外国人から見たら、「なんだあの醜い車は!?」とか「あんな車売れるなんて、やっぱり日本は野蛮だな」とか思われてるみたいですが、多くの荷物を積めてたくさんの人を運べるミニバンは本来の車のあるべき姿、一種の車の完成形なのかもしれません。