ウイスキーを一番最初に造ったのは、スコッチかアイリッシュか?
はウイスキー好きなら議論になるぐらい歴史が古いアイリッシュウイスキー
しかし!
かつては名門だったはずのアイリッシュウイスキーの歴史は、とにかく下り坂ばかりの踏んだり蹴ったりの歴史・・・
ということで今回はちょっぴりかわいそうな運の悪いウイスキーであるアイリッシュウイスキーの歴史・特徴・おすすめ銘柄ランキングを紹介しようと思います!
アイリッシュウイスキーとは?
海を挟んでお隣のスコットランドと近いこともあり、原料や製法はスコッチウイスキーとほとんど同じ
ただ微秒に違いもあって・・・
- ピートを使わない
- 蒸留は3回
- スペルが「whiskey」
簡単に見ていくと・・・
ピートを使わない
スコットランドの一部地方では、ピートと呼ばれる泥炭を燃やした熱で麦芽を乾燥させますが、アイリッシュウイスキーにはこの風習がありません
ということで、ピート由来の煙くさいスモーキーな香りがなく、スコッチに比べてライトな飲み味が特徴です
蒸留は3回
現在のスコッチウイスキー製造を行う蒸留所のほとんどは、2回蒸留が主流ですが、アイリッシュウイスキーは昔ながらの伝統の3回蒸留を現在も行っています
これにより、スコッチよりもマイルドな飲み口が特徴となっています
スペルが「whiskey」
詳しい起源は定かではありませんが、なぜかアイルランドは伝統的にウイスキーを「whiskey」とつづります
諸説はありますが、アイルランドのウイスキー職人がスコッチウイスキーとの違いを明確にするために、勝手に「e」を付け足したという説が有力です
ちなみに世界5大ウイスキーにもその影響が現れており、スコッチウイスキーをお手本にして造ったジャパニーズウイスキーは「whisky」
一方、アイリッシュウイスキーの背中を追いかけていたアメリカンウイスキーは「whiskey」とアイリッシュ派とスコッチ派に分かれています
アイリッシュウイスキーの不運な歴史をざっくりと紹介!
スコットランドと「ウイスキー発祥の地」をいつも争っているアイルランド
かつては世界有数のウイスキー生産地でしたが、現在、スコットランドが100を超える蒸留所を有する一方、アイルランドはたったの18個にまで衰退してしまいました
で、この衰退の原因・・・
みたいな悪いことはほとんどしておらず、色々な歴史の不運に見舞われてしまったという、なんとも運の悪いウイスキーがアイリッシュウイスキー
簡単に説明するとこんな感じ!
一つずつ簡単に見ていこうと思います!
アメリカ禁酒法の影響
まず一番大きいのはこれ!
1919年にアメリカで禁酒法が実施されたために、一大消費地を失ってしまったアイリッシュウイスキー
自国で消費しようにも、人口が極めて少ないアイルランドなので、アイリッシュウイスキーは行き場がなくなり、蒸留所はバンバン閉鎖されることになってしまいました
アメリカ産偽アイリッシュの風評被害
禁酒法が実施された後のアメリカでは密造酒造りが盛んに行われていました
で、アメリカで造られた密造ウイスキーに、当時世界的に評価が高かった、「アイリッシュウイスキー」の一言を書いておくと、みるみる売れるので、
密造品も粗悪品もみんなして「アイリッシュウイスキー」とラベルに書いていたら、アイリッシュウイスキー=粗悪品というイメージがついてしまい、本物まで売上げが下がってしまいました
アイルランド独立へのイギリスの報復
1922年にアイルランド自由国としてイギリスから独立したアイルランド
独立への報復として、アイリッシュウイスキーはイギリス国内とイギリス植民地の全てから販売禁止処分を受けて、売上げが激減してしまいました
アイルランドがWWⅡで中立だったことによる忌避
ということで、戦場のアメリカ兵の間では同盟国であるスコットランドのスコッチウイスキーが好まれました
そして戦後、アメリカに戻った兵士たちは、戦地で飲んだスコッチウイスキーの味が忘れられず、アメリカ国内ではスコッチウイスキーが主流になってしまいました
カクテル「アイリッシュ・コーヒー」による変なイメージ
アイルランドの空港で働くバーテンダーが考案したカクテルである「アイリッシュ・コーヒー」
空港の利用者の間で評判となり、世界中に広まりました
ということで、ついにアイリッシュウイスキーが表舞台に立つかと思いきや・・・
あまりにもアイリッシュ・コーヒーのイメージが強過ぎて、アイリッシュウイスキーはカクテルを作るための単なる材料というマイナスのイメージが広まり、大して売上げアップにはつながりませんでした
ちなみにライバルのスコッチウイスキーは、ここぞとばかりにアイリッシュ・コーヒーブームに乗っかり、
アイリッシュウイスキーをスコッチウイスキーに入れ替えただけの「ゲーリック・コーヒー」というカクテルを作りましたとさ・・・
アイリッシュウイスキーのおすすめ人気銘柄ランキング!
てことで、歴史的にはかわいそうなぐらい踏んだり蹴ったりのアイリッシュウイスキー
味に関しては現代でも一流レベルのウイスキー造りを行っており、評判は高いです!ただ生産量と営業力がちょっと弱いだけ・・・
そんなアイリッシュウイスキー、ここからは人気の銘柄をランキング形式で紹介していこうと思います!
ジェムソン スタンダード
良くも悪くもアイリッシュウイスキーらしく、クセも個性もないので、初心者でもストレートで飲めるぐらい飲みやすいです
また1本1800円ぐらいと、割とお手頃な価格もポイントの一つ!
しかし個性がないとはいえ一応ウイスキー!青りんごのようなフルーティな香りと味わいに、後味に蜂蜜やバニラのような甘さが残る優しい味わいが特徴です
同価格帯のスコッチウイスキーに比べると飲みやすいので、初めてウイスキーを飲む人にもおすすめです!
タラモア デュー
1897年登場とアイリッシュウイスキーの中でも屈指の歴史を誇るタラモア デューですが、前述したとおりアイリッシュウイスキーの蒸留所衰退に巻き込まれ、
一時期はアイリッシュウイスキー一番人気のジェムソンを製造するミドルトン蒸留所が製造を担っていました。現在は無事、創業の地タラモアに蒸留所を再建することに成功したようです
味は甘さが中心のジェムソンとは対照的に、苦みと酸味が中心でちょっと飲みにくいかも
ほろ苦い味わいが好きな人にはおすすめ!またビター風味なアイリッシュ・コーヒーを作るのにも向いているので、ジェムソンとお好みで使い分けるのがおすすめ!
ブッシュミルズ
創業1608年、アイルランド最古の蒸留所であるブッシュミルズ
味わいは一つ上で紹介したほろ苦いウイスキー「タラモア」よりもさらに苦く、お世辞にも飲みやすいとは言えないレベル・・・
ビターやほろ苦いを通り越して、渋いレベルなので、超ビターなアイリッシュ・コーヒーを作りたい人にはぴったりかも!
ジェムソン カスクメイツ
アイリッシュウイスキーの面白いところが、定期的にウイスキーの常識をぶっ壊すような一風変わったウイスキーを生み出すこと
そしてこのジェムソン カスクメイツもウイスキーの中ではかなりトリッキーなウイスキー
このウイスキー、なんとビールの熟成に使用した中古の樽を使って熟成している!
そんなジェムソン カスクメイツが生まれたのは、ウイスキー職人とビール職人の遊びがきっかけ
ジェムソンの蒸留所の近所にあるビールメーカー・フランシスカンウェルのビール職人が、知り合いのジェムソンのウイスキー職人から中古の樽を譲り受け、ウイスキー風味のビールを造ったのがはじまり
で、そのビール作りに使った中古のビール樽をジェムソン蒸留所が返してもらって、再びウイスキー造りに使用して、ビール風味のウイスキーとして生まれたのがこのジェムソン カスクメイツ
嘘みたいなふざけた話だけど、このYouTube動画で紹介されているので、興味のある人は見てみてください!
ジェムソン ブラック・バレル
これまた一風変わったウイスキー
熟成に使う樽の内側を炙って黒焦げにした樽で造ったのがジェムソン ブラック・バレル
樽を焦がしただけなのに、ノーマルのジェムソンに比べて、なぜかナッツの香り、スパイス、バニラの香りが加わっている不思議な風味のウイスキーです
ノーマルのジェムソン飲んで気に入った人は、ブラック・バレルも買って飲み比べてみるのおすすめ!
まとめ
まじめにウイスキー造りには取り組んでいるんだけど、なぜかいつの時代も人気が出ないアイリッシュウイスキー
クセがないライトな飲み口はストレートで飲むのはもちろん!カクテルベースウイスキーとしても優秀です!
また、独立やイギリスとの紛争の歴史からやたらと記念日が多いアイルランドに合わせて、しょっちゅう限定ウイスキーや記念ウイスキーが発売されるアイリッシュウイスキー
もしかしたら買って家に置いておいたら、プレミアがついた!なんてこともあるかもしれません・・・
てことで、知る人ぞ知るアイリッシュウイスキー、結構面白いウイスキーなので、初心者もウイスキー好きも一度は飲んでみるのおすすめですよ!