ウイスキー造りに欠かせない工程といったら、やっぱり樽熟成!
そもそもウイスキーが、10年以上に渡って木の樽で寝かせて、独特の風味が生まれるということを知らなかった人も多いのではないでしょうか?
ということで今回は、ウイスキーと樽の切っても切れない関係について、初心者の人にも一から分かるように解説してみようと思います!
これを読めば、ウイスキーを樽で熟成させる理由や効果、また樽の種類による違いも完璧に理解できるはず!
【初心者向け】なぜウイスキーは樽で熟成する!?理由と樽の種類の違いを解説
樽熟成前のウイスキーは無色透明!
製造工程の一番最後に、木の樽に詰められ、長い眠りにつくウイスキーですが、この樽に入れる直前のウイスキーって、実はほぼ無色透明!
無色透明でアルコール度数が65〜70%、味わいはとても荒々しいという、ウイスキーとは似ても似つかないお酒です
ということで、ウイスキーの味わいのほとんどは、樽熟成によって造られると言っても過言ではありません
短いと数年、長いものでは数十年という期間を樽で過ごすウイスキー
この長期間の熟成により、樽の木の成分がウイスキーに染み出し、色は無色透明から琥珀色へと変化
また、味わいも荒々しさが消え、まろやかな風味へと変化します
現代のウイスキーの樽熟成は「密造酒」の偶然で生まれた!
そもそもウイスキーはなぜ、これほど長期間に渡り樽熟成を行うようになったのでしょうか?
実は、ウイスキーと樽の出会いは、「密造酒」をきっかけにした偶然で誕生しています
13世紀ごろにアイルランドかスコットランドで生まれたと言われるウイスキー
当時のウイスキーは、樽熟成を行っておらず、無色透明な荒々しい味わいでした
そして、約500年ぐらい経った18世紀ごろ。スコットランドがイングランドに併合され、ウイスキーに対して、超高額な税金を課されることになります
これに対抗するべく、スコットランドのウイスキー業者は、次第に山や谷の合間など、イングランド政府の役人に見つからないような場所でウイスキー製造を行い、製造した原酒は木の樽に貯蔵。もし政府の役人がやって来ても、すぐに樽を持ち出し移動できるという方法で、高額な課税を逃れました
そして、当初はウイスキーの保管に便利ということで使っていた木の樽
いざ開けてみたら、これまでのウイスキーとは全く異なる、まろやかで琥珀色の美味しい液体となっており、この偶然の出会いこそが、現在のウイスキーの原型
ちなみに、樽熟成されたウイスキーがあまりにも美味しいという噂を聞きつけた当時のイギリス国王。どうしても自分もウイスキーを飲んでみたいがために、1824年にグレンリベット蒸留所、マッカラン蒸留所を政府公認蒸留所として認めたという逸話が残るほど・・・
現在のウイスキーの味わいは、300年前のイギリス政府の不当な課税のおかげで生まれた
と言っても過言ではありませんね・・・(笑)
史上初のイギリス政府公認蒸留所「グレンリベット」についてはこちらの記事!
イギリス政府公認蒸留所2番目「マッカラン」についてはこちらの記事!
樽熟成によるウイスキーへの効果
美しい琥珀色に変化
熟成前はほぼ無色透明のウイスキー
樽で熟成させることにより、美しい琥珀色の液体へと変化します
これは、樽の材料の木に含まれるリグニンという成分が、液体に溶け出すことによって生まれています
また、材料の木の種類によって、ウイスキーの色味も変化し、アメリカ産のオーク材を使った樽を使用すると黄色味が強い褐色に、ヨーロッパ産のオーク材を使うと赤みが強い色合いになると言われています
奥深い風味と香りが生まれる
ウイスキーの独特の芳醇な香りも樽熟成によるもの!
バニラや蜂蜜などと例えられる、ウイスキーの甘い香りは樽に使われる木の成分の影響を受けて生まれます
また、樽熟成前の原酒と木の成分が化学反応して生まれる香りもあり、最近の蒸留所は、この化学反応をいかに引き出すかという、緻密な計算の下で原酒造りを行っています
味わいがまろやかでアルコール度数が落ちる
樽熟成前の原酒は、アルコール度数が65〜70%、味わいはとても荒々しいという特徴を持っていますが、熟成後は、アルコール度数50%程度、味わいは甘みを含んだまろやかなものへと変わっています
これも樽の木の成分の影響が大きく、近年はより芳醇な香りを求めて、ワインやシェリー酒、ラム酒など他のお酒の製造に使われた樽を、あえてウイスキー造りに再利用するという手法も多く採用されています
また、樽に詰められる前の原酒は、「ニューポット」と呼ばれ、蒸留所見学に行くと飲める機会も多いので、普段飲んでいるウイスキーと飲み比べてみると面白いと思います!
樽の種類によるウイスキーの味わいの違い
ウイスキーは、樽に使われる木の材質によっても大きく味が変化します
ここからは、ウイスキーの樽によく使われる代表的な木の種類と味わいの特徴を見てみましょう!
オーク樽
世界中多くのウイスキーに使用される樽材がオーク樽
アメリカンオークとヨーロピアンオークの大きく2種類が存在し、バニラやトロピカルフルーツ、ドライフルーツを思わせるといった特徴があります
また、ヨーロピアンオークは、ワインやシェリーの製造に使われた樽を再利用することも多く、ウイスキーの風味と同時にワインやシェリーの風味を楽しむこともできます
バーボン樽
アメリカの法律で、「樽の内側を火で炙り焦がすこと」という取り決めがあり、バーボン樽はもれなく火で炙る「チャーリング」という工程が行われています
オーク樽に比べて味わいが濃く、熟成スピードが早いのが特徴で、強いバニラのような風味、カラメルのような甘さを楽しめます
また、アメリカで一度バーボンウイスキー造りに使われた樽は、スコットランドやアイルランドに輸出され、再び利用されることも多いです
ミズナラ樽
日本固有の木であるミズナラ(どんぐりの木)を使用したのがミズナラ樽
世界的にはジャパニーズオークという名前でも知られており、アメリカやヨーロッパと同様のオーク材が採取できない日本で生まれた、日本独特の樽材です
アメリカンオークやヨーロピアンオークに比べて、とても香りが強いことが特徴で、白檀や伽羅のような東洋独特の香りがすることで、近年急速に人気が高まっています
元々は、サントリーが世界で初めてミズナラ樽を使ったのが始まりで、「山崎」の人気により、世界中に人気が伝わったミズナラ樽
最近はすっかり高級ウイスキーの代名詞的な香りとなっており、滅多にお目にかかれない香りです
まとめ
イギリス政府の不当とも言える課税のおかげで誕生したウイスキーの樽熟成・・・
当時の人はたまったもんじゃなかったでしょうが、おかげで他のお酒では味わえない独特の風味と芳醇な味わいを楽しむことができる現代のウイスキー
ウイスキーを味わう時は、ふとこんな豆知識を思い出しながら飲んでみると面白いかもしれません
また、熟成の年数、樽に使われる材質によって、風味や味わいが大きく異なるウイスキー
ウイスキー選びの際は、樽の材質に目を向けてみると、みるみる新しい発見ができて、きっと楽しいですよ!